うつ病
概要
精神状態のうち「気分の落ち込み」に注目してまとめられたグループが「気分障害」で、うつ病、この中に分類されています。
うつ病は、憂うつ病や趣味の減退、焦燥など精神症状とともに、食欲低下、頭痛、疲労感などの身体症状も多く現れる病気です。
特に、気分がひどく落ち込んだり意欲が低下するなど、精神面の症状が強く現れる病気で、人口の1割が生涯のうち一度はかかる病気といわれるほど多い病気です。
特徴・メカニズム
●うつ病の特徴
・感情のリズムがなくなり、気分が落ち込んだままになる
受験の失敗、失恋、仕事上のトラブル、家族との離別など、人生には思うようにならないことや、思いがけない不幸に遭遇することがあり、そのような時は、誰でも憂鬱な気分に襲われます。
でも通常は、落ち込んだ気分は、時間とともに回復して、立ち直っていくものです。
このように感情には回復力があり、また、循環もしくはリズムがあります。ところが感情のリズムがなくなり気分が落ち込んだりやる気がなくなったりした状態が続くのが「うつ病」です。ひどい時には何年も続きます。
・本人が頑張れば治るものではない
うつ病の場合、本人の「頑張り」でどうにかなるものではありません。周りの人が、「努力が足りない、怠けている」とかいうと「うつ」はさらに悪化していきます。
本人の意思の問題ではなく、治療が必要なのです。
●うつ病のメカニズム
うつ病発症の原因は、ストレスや環境・性格・遺伝素因などが相互に作用して発病すると考えられていますが、明確にはわかっていません。医学的には原因不明の病気の中に分類されています。
しかし、生物学的(神経科学的)な側面から、うつ病をもたらす身体的なメカニズムについては、かなりのところまで明らかになってきています。
間脳にある視床下部は、自律神経の中心ですが、人の感情に深い関係を持っていることがわかってきました。
視床下部の機能は、精神伝達物質によって保たれていますが、うつ病は、ストレスなどの影響を受け、この機能に異常が生じて感情や意欲などの面で障害が起こると考えられています。
そして、抗うつ薬は、これらの精神伝達物質の利用率を上げる働きがあることもわかっています。
うつ病診断基準
アメリカ精神医学会(DSM-IV)が作成した「気分障害」の診断基準によれば、下記の1、2のいずれかの症状があり、3~9のうち5つ以上があって、それらの症状が2週間以上続く場合となっています。
1抑うつ気分
2興味または喜びの喪失
3体重減少(増加)、食欲減退(増加)
4不眠(過眠)
5精神運動制止または焦燥
6易疲労性または無気力
7無価値観、罪責感
8思考力や集中力減退、決断困難
9死について反復思考。自殺企図、自殺念慮
うつ病の漢方薬治療
「うつ病」の成り立ちのお話したように、受験の失敗、失恋、仕事上のトラブル、家族との離別など、人生には思うようにならないことや、思いがけない不幸に遭遇することがあり、そのような時は、誰でも憂鬱な気分に襲われます。
でも通常は、落ち込んだ気分は時間とともに回復して、立ち直っていくものです。このように感情には回復力があるものです。
ところが「うつ病」の人は、気分が落ち込んだままの状態が続きます。
この回復力がなくなった状態を、漢方医学では「心失所養」といいます。「心失所養」とは、「こころ」を元気にするエネルギーや栄養が不足したことを指します。
心失所養の病態と漢方薬
1、心脾両虚
気分が晴れない、憂うつ感などの精神症状のほかに、疲れる、飲食料が減少、息切れなどの症状があり、女性では月経不順が起こる。
2、心腎陰虚
腎陰虚と心陰虚を伴うもので、思考力の低下、物忘れ、物事に興味がないなどの他に、口内炎ができやすい、盗汁、口や喉の渇き、下質紅などの熱症状がある。
3、心肝気鬱
憂うつで気分が不安定。胸が痞えたような感じ、胸や脇が張る、胃が重く、よくゲップが出て食欲がない、大便がすっきり出ないなど。
4、痰阻心竅
痰濁が心竅(心の所在するところ)を塞ぐため、精神障害を中心とする症状が起こる。動悸、恍惚などのほか、咽にものが痞えたような感じがして吐き出そうとしても出ず、飲み込もうとしても下に降りないなど。