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心と身体に自然の力を

漢方不妊周期療法


 周期療法

 中国では不妊症の方に使われている漢方療法として「周期療法」という手法を用いています。周期療法は中国漢方(中医学)で約30年前から使われ始め、漢方薬を使った不妊治療の中で最も有効な方法です。
 同じ漢方薬をいつまでも飲み続ける方法ではなく、月経周期のメカニズムと中国漢方(中医学)の考え方を組み合わせた不妊症の対処法です。
 月経周期を大きく4つの時期(月経期、卵胞期、排卵期、黄体期)に分け、それぞれの時期に合わせて漢方薬を飲み分けていきます。そうすることで月経のリズムを取り戻し、体を良い状態に導くことができます。

 さらに、子宮内膜症、子宮筋腫、排卵障害、高プロラクチン血症など不妊症になりやすい病気や障害を周期療法の中で治療することもできます。
 個人個人の基礎体温表と体質、不妊の原因、現在の月経の状態から判断して漢方薬を選びますが、基本的な考え方は次のとおりになっています。

※尚現在の基礎体温表の形、体質により、周期療法をすぐに初めることが出来ない場合もありますのでご相談下さい。


・月経期
 不要になった子宮内膜や月経血を完全に排出させ、子宮内部をきれいにします。これをしないと血のめぐりが悪くなる原因になります。
 この時期は気血のめぐりをよくして(活血理気)月経血を押し出す力を助ける方法をとります。
(例)芎帰調血飲第一加減、冠元顆粒、折衝飲、田七人参、等


・卵胞期
 月経後から排卵までの時期で、卵胞が発育していく時期でもあり、新しい子宮内膜の増殖をうながす時期でもあります。
 卵胞をしっかり成長させ、成熟した卵子を作るためには潤い(陰)と血が必要です。補陰薬養血薬類を服用して、女性ホルモンの分泌を促進させます。

(例)婦宝当帰膠、参茸補血丸、杞菊地黄丸、知柏地黄丸、等


・排胞期
 卵胞膜を破って卵子が飛び出す時期です。スムーズに排卵させるために理気活血類を服用します。
(例)冠元顆粒、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、等


・黄体期
 体温を上昇させ、子宮内膜を厚くするとともに、受精卵が着床しやすくするための準備期間です。基本的には暖める補陽が必要です。
 さらに受精卵に十分な栄養を送り込むために補腎薬を使います。

(例)参茸補血丸、鹿茸大補湯、至宝三鞭丸、等
※周期療法は万能ではありません。

 周期療法は、漢方薬を使った不妊治療としては画期的な方法です。弁証論治と組み合わせて、個々にあった漢方薬を的確に選べば妊娠成功率を飛躍的にアップすることが出来ます。
 しかしすべての人に今すぐ実行できるわけではありません。
 定期的な月経のない人や、身体が虚弱で妊娠~出産に必要なからだの準備が不足している人は、それぞれ月経を正常にする漢方薬、からだ作りの漢方薬を優先したほうが良い結果が出ます。
 またクロミッドなどの連用で卵巣の動きが悪くなっている方も、卵巣を健康な状態に整えるための漢方薬を優先したほうがよいでしょう。
 両方を併用する方法もありますのでぜひ相談して下さい。
 又、周期療法は中医学と西洋医学の利点を取り入れた療法です。西洋医学の検査結果を参考にして、さらに的確な漢方薬を選ぶことが出来ますので、正確な診断のできる不妊治療専門の医師の診断を受けて自分の状態を知っておく事は大切です。

 女性のからだ

・東洋医学から考える女性のカラダ
 中国の医書には女性の身体は「7」の倍数で変化すると記載がなされています。
 7歳で歯が生え揃い、女性としての成長がはじまり、14歳で初潮を迎え、21歳で女性としての成熟期に入り28歳でピークに達し、35歳から少しずつ衰えはじめ、42歳で老化が加速し49歳で閉経を迎えるとあります。

 漢方では生理の状態を体調や体の状態の判断としてとても重視しています。ですから、生理について正しく理解し観察する習慣をつけておくことも大切なことです。
 1、2度生理周期が乱れることは誰でもあります。特に気にすることではありませんが、以前と違う生理が3周期以上続くようなら一度ご相談下さい。治療の必要があるかもしれません。


・月経周期、月経回数
 月経周期は27~35日くらいが一般的です。目安として24日以内35日以上の方は基礎体温表をご持参の上一度ご相談下さい。
 生理周期が長めの方は、問題ない場合もありますが、短い方は特に注意が必要です。

 
・月経量
 一般的に60~120mlといわれていますが、実際に計るわけでもないので、毎回変化がないか比べることが大切です。


・経血の色
 理想的な色はやや暗い赤色です。薄め、黒っぽい、等、色でも体調の具合の判断にもなります。


・経血の状態
 月経血は妊娠しなかったために不要になった子宮内膜の組織と血液のほかに子宮や膣からの分泌液が混ざったものです。
 そのため、普通の血液より濃くやや粘りがあります。水のようにサラサラだったり塊が混じっているようなときは何らかの問題があるように思われます。


・おりものについて
 排卵期の「おりもの」の状態は大切です。
 一般に卵の白身のような透明で粘りの強いものが正常です。持続日数はだいたい生理日数と同じくらいと言われています。
 「おりもの」の役目は膣を潤すと同時に精子が子宮の奥まで移動するのを助けます。
 排卵期の「おりもの」の量が少ないことは卵胞の発育に問題がある可能性もあります。又、排卵促進剤クロミッドを服用していると量は減少してしまいます。
 排卵日はおりものの量が一番多くなったときだと思われがちですが、実際の排卵はおりものが多くなった日の翌々日だそうです。
 排卵の時期に関してはエコー検査を受けるのが確実です。又、排卵期以外のおりものは白色~薄黄色が少量あるのが普通です。
 一日に何度もおりものシートを取り替えなければならないほど大量のおりものの量が続く場合は冷えなどが原因している可能性があります。又、色やにおいのきつい、黄色のおりものが大量にでる場合は感染症の疑いがあります。早めに婦人科で受診することをおすすめします。


・体内の生理的変化と月経サイクル


・不妊周期療法の原理


 基礎体温

 不妊症の治療において、基礎体温をつけることは大切です。基礎体温をつけることで「排卵日」を予測するだけでなく、女性の体質や体調、リズムなどいろいろなことを知る手がかりとなります。
 又、漢方治療をはじめた時、体調、ホルモンの変化が基礎体温で予測することができます。


・理想的な基礎体温
 基礎体温はふつう、右の図のように低温期と高温期の二相に分かれるのが正常です。体温は低温期で36.2℃以上、高温期で36.7℃以上になります。
 ※排卵誘発剤などを続けていると体内に熱がこもり、体温が高くなりがちです。

 1.低温期と高温期に0.3~0.5℃の差がある
 2.低温期から高温期への移行がスムーズである
 3.排卵までに12日以上ある
 4.高温期の体温が安定していること


・低温相
 低温相は月経が始まってから排卵が起こるまでの時期です。この時期は主に卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されています。
 この時期に卵胞がしっかり成熟し、質のよい卵を育てると同時に、子宮内膜の増殖を行っています。


・排卵
 低温相から高温相に移るときに体温はいったん下がり、その直後にスムーズに上昇します。排卵する時期はほとんどの人が体温の急上昇中におこりますが。中には体温が下がった時点や高温相に入ってからの人もいます。


・高温相
 高温相は排卵が起こってから次の月経が始まるまでの時期をいい、体温が高くなります。この時はおもに黄体ホルモン(プロデステロン)が分泌され、子宮内膜に新鮮な血液を蓄え、厚くし体温を高めます。

 男性不妊

 男性不妊症患者は増加しています。以前は健康的な若い男性の場合、通常一億の精子が見られましたが今は四千万程度が多く、中には一千万にも満たない男性もいます。当然生育率が低下しますので人口受精でも妊娠に結びつきません。
 西洋医学が不得意とする男性不妊は漢方治療の手助けが必要とされています。

・原因
 1.精子が十分に作られない
 2.精子を成熟させるメカニズムに不備がある
 3.精子の通り道に障害がある
 4.性交、射精ができない


・精液の異常
  男性の以前妊娠に必要な条件(標準)
※精子濃度 20×10⁶/ml (60~200×10⁶/ml
※運動率  50%以上     (70~90%)
※高連運動率 25%以上
※正常形態率 30%      (80%以上)
※精液量   2.0ml以上  (2.5~4.5ml)
   精液所見は検査のたびにかなり変動します。


・中医学には
 精子や精液の異常を「腎陽虚」「腎陰虚」「気血両虚」「気滞」「痰湿」にあると考えます。

1.腎陽虚が引き起こす不妊症
  精液は薄く精子の数も少なく運動も活発ではない。
  腰や下肢がだるく座りたがる、性欲減退、インポテツ、勃起不全、遺精がみられる、結婚の高齢化だけでなく、最近はやりのセックスレス夫婦などに多く見られる傾向

2.腎陰虚が引き起こす不妊症
 先天的な素因に加え、過度のセックスなどにより腎精が消耗され、陰虚火旺になったもの、精液の産生が不足し粘度が増して精子の運動が障害され受胎不能になる。
 性欲の亢進、持続性勃起、射精不全をともないます、手のひらや足の裏がほてったり、口が乾いて冷たいものを欲しがる、一見性豪タイプ

3.気血両虚が引き起こす不妊症
 先天的な虚弱体質、または慢性疾患により体が弱ったり、過労により脾の運化機能が傷つけられ生殖機能がなくなる、精液量や精子数が少なく活動力も弱い、射精感も強く感じない、顔色につやがなく、目の疲れ・かすみを感じる、また、声が小さく、疲れやすく根気が続かない方。

4.気滞が引き起こす不妊症
 精神的ストレス、悩み事、怒りなどがたまり、疎泄が失調し、不妊をきたす病態。
 性欲はあるが気が焦るだけで勃起が不十分であったり、挿入後萎えたり早漏を伴うこともある。長期にわたる結婚生活での不妊や仕事が多忙な方に多い。

5.痰湿が引き起こす不妊症
 普段から味の濃いものや、脂っこいもの、美食を好み、しまりのない肥満体となる。
 体がだるくむくみやすく、毎日kg単位で体重が変わる、精液は粘く液化しない。
 ともに射精障害がある。

 漢方薬治療

●卵管通過障害の漢方薬治療
 卵管が詰まって、受精することができない「卵管障害」は、不妊の原因としてかなり多いといわれています。
 クラミジアなどの性感染症から、卵管が炎症を起こしたり、子宮内粘膜症によって、卵管に癒着で詰まるケースがほとんどですが、中には先天的に卵管が細い「卵管形態異常」もあります。

 中医学では、卵管が詰まる原因を。主に湿熱、気滞、瘀血などに分けて考えています。

 例えば、子宮内膜症による卵管のつまりは、気滞と瘀血が問題となることが多いので、気や血をめぐらせる理気活血の漢方薬を使って対処していきます。
 詰まりの程度にもよりますが、理気活血によって、改善することも十分にありえます。

 ただ、完全に卵管が詰まっている「卵管閉塞」と診断された場合には、やはり手術が必要になりますし、場合によっては体外受精を選択したほうがいいケースもあります。
 この場合も、体質に応じた周期療法を併用することで。より妊娠しやすい状態に導いていくことが可能です。


●子宮筋腫の漢方薬治療
 女性疾患の中でもっとも多い腫瘍で、日常とくに30代後半から40代前半によく見られます。
 子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、できる場所によっては、着床の障害や、子宮の変形が問題となり、不妊症や流産の原因になることがあります。小さい場合は特に治療しなくてもいいようですが、サイズが大きくなると積極的な治療が必要になります。
 漢方では活血化お薬や化痰薬を使います。筋層内筋腫は生理痛がひどくなり、生理が止まりにくくなることもあり、漢方では活血化お薬を基本として、利気化痰薬を併用します。粘膜下筋腫は子宮内膜にあるため、生理とともに排出されてしまうケースがあります。
 このタイプは生理の量が多くなり、ひどいときは大量に出血して止まらなくなる事もあるようです。
 漢方では活血化お薬を使いますが、出血が多い場合は、生理中は止血作用のある漢方を使い、生理以外に活血化お薬を多く使うこともあります。
 一般的には鶏卵大までなら、漢方で筋腫が小さくなったり、無くなるケースがあります。それより大きいケースでも小さくなるケースがありますので、試す価値はあります。

 又、最近ピクノジュールと生薬成分の健康食品爽月宝(そうげつほう)が発売され従来の漢方治療にあわせると、生理痛も早く治ります。


●子宮内膜症の漢方薬治療
 子宮内膜症は、子宮内膜以外の組織で内膜が増殖してしまう病気で、不妊の原因となることがあります。
 両側の卵巣が「チョコレート嚢腫」を起こしている場合や、卵管が癒着を起こしている場合などには、手術が必要なケースが多いのですが、早期に診断・治療していれば、周期療法を用いる価値は十分にあると思います。

 中医学では昔から「離経の血は瘀血となる」という考え方をしていて、経脈(血の通り道)外にあふれ出た血は、血のめぐりを滞らせる原因となると考えています。子宮内膜症は、まさにこの離経の血が増えた状態です。

 陰と陽という面からみると、子宮内膜が子宮以外の組織、または子宮の筋肉の中に発生し、育ってしまうのは、卵胞発育期に余分な陰が成長しているということになります、この余分な陰の成長を止めるためには、陰を動かす力である陽を高めるという方法をとります。
 実際に子宮内膜症を患っている人の場合、陽の力が足りないために(陽虚)、余分なものを体外に排泄する力がない人も多く、そのためにさらに瘀血が悪化する、という状態になっていることも多いものです。

 周期療法を用いる際には、まず陽の時期である黄体期に、「参茸補血丸」など陽を高める漢方薬を用い、月経期には「冠元顆粒」、「血府逐瘀丸」、あるいは「ピクノジェール製剤」や「田七人参」、などで十分に活血するのが基本となります。(温陽活血)。

 このように、周期療法は不妊の対処法としてだけでなく、子宮内膜症の改善にも役立てることができるのが、大きなメリットです。
 そして、周期療法によって陰陽のバランスが整い、妊娠することができれば、子宮内膜症の根本治療にもつながります。

●多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)の漢方薬治療
 多嚢胞性卵巣は、病院で超音波検査を受けると、卵巣の表面に直径5~10ミリほどの小さな嚢胞が複数連なって見えます。
 この状態が悪化すると、卵巣の中にある卵胞は成長するものの、卵巣の皮膜が固いため排卵いづらいという症状がでます。重度になると排卵障害の中でも難治性の疾患になります。
 血液検査ではLHの高値、男性ホルモンの高値、インスリン抵抗性などが見られます。
 中医学では、多嚢胞性卵巣は卵巣の周りにお血や痰湿がこびりつき、卵粘膜が硬くなった病態と考えます。軽度の場合は活血薬と化痰薬を配合した周期療法が効果的です。中~重度になると排卵障害が顕著になり、ひどい場合は無排卵になります。
 このようなケースは生理期~低温期に協力に活血化痰しながら、必要に応じて補腎を行いますが、クロミッドなどの排卵誘発剤を併用するほうが効果的なこともあります。

 ただ排卵さえあれば妊娠は可能です。男性ホルモンの分泌異常を伴うことも多く肥満ぎみ、またはやせているけれど毛深いといった症状がよく見られます。
 この病気の人は「腎虚」の状態で卵の成長環境が悪く、さらに体の中に余分な水分や脂肪などがたまった「痰湿」、「血」のめぐりの悪い「瘀血」などがあることが多いようです。
 そのため、「腎」の働きを高めながら、体の中の「痰湿」を取り除き「血」のめぐりをよくする「桂枝茯苓丸」や「冠元顆粒」「チャガ」などを用いて排卵を促します。


●高プロラクチン血症の漢方薬治療
 高プロラクチン血症とは、授乳をしていないにもかかわらず血中の乳汁分泌ホルモン(プロラクチン=PRL)の値が高くなっている状態をさします。プロラクチンには卵の発育を抑制する作用があるため、卵胞期の基礎体温が不安定になりやすいという特徴があります。

 高プロラクチン血症の場合、プロラクチンの分泌を抑える薬の投与が一般的で、薬が効いてホルモンのバランスが整い、無事妊娠するケースも多いようです。
 ただ、この薬の副作用で、吐き気、めまい、ふらつきなどが現れて続けて飲めない人もいます。また、プロラクチンの数値は正常に戻ったのに、黄体機能は改善されず、なかなか妊娠しないというケースも少なくありません。

 こういった問題があることから、西洋医学の領域でも、漢方薬による高プロラクチン血症の治療が試みられており、プロラクチンの分泌を抑える生薬として知られる「炒り麦芽」や、「芍薬甘草湯」などが用いられるようになってきました。

 中医学では、高プロラクチン血症も、各周期のホルモンバランスを整えることが大切と考え、周期療法をメインにした治療を行い、そこに「炒り麦芽」などの生薬をプラスするという方法をとります。
 また、プロラクチンはストレスが強いときに多く分泌されること、高プロラクチン血症の人は、乳房が張りやすく、特に高湿期には激しい痛みを伴う、月経前にイライラしやすい、など、気のめぐりが悪い肝気鬱滞の症状がみられることも多いことから、月経前には気をめぐらせる「逍遥散」などの薬を用いることもあります。


●無月経の漢方薬治療
 無月経の原因はさまざまです。過度のストレスや、過激なダイエット、一部の薬剤による副作用などの場合は、原因を取り除くことで自然に回復することもありますが、重度の多嚢胞性卵巣症候群や早発性卵巣機能不全などは、治療が難しくなります。
 特に、無月経になってから半年以上経つと、内膜が萎縮していまう可能性もあるので、できるだけ早めに治療を受けることが大切です。

 無月経には、適齢期を過ぎても初潮がない「原発性無月経」と初潮はあったものの、何らかの原因で、月経が連続3周期以上止まっている「続発性無月経」に分けられますが、中医学では、いずれの場合も、主に生殖能力をつかさどる腎に問題が起こっていると考えます。
 そのほか、血のめぐりが悪い瘀血、あるいは、痰湿という病理物質が体の中にたまっている可能性を考えていきます。

 対処法は、これらの原因によって異なりますが、基本的に無月経は、卵胞が育たないために一相性の体温で、低温期がずっと続いている状態といえます。
 月経を起こすためには、卵胞を育てることが必要なので、まずは、周期療法の卵胞期の薬を使っていきます。そして、例えばおりものが増えてきたなどの変化が現れるようなら、「卵胞が発育して排卵する」という動きを促す補陽活血促排卵のための漢方薬を用い、人工的にリズムをつけていきます。

 このような対処法で、月経周期が整うことも多いのですが、無月経が長引いているような場合には、やはり西洋医学の治療法も併用する必要があるでしょう。


●無排卵の漢方薬治療
 「月経は毎月来ているから、妊娠できる」と思っている人は少なくないようですが、中には「無排卵月経」といって、排卵がないのに月経のような出血だけが起こっていることもあります。
 この場合、基礎体温が低温期と高温期の二相性に分かれず、平坦なラインを描きますので、ふだんから、基礎体温をつけている人なら、すぐに気がつくはずです。
 ただし、まれに排卵せずに成長した卵胞が黄体化する場合もあり、この場合は二相性となりますので、場合によっては婦人科で排卵のチェックを受ける必要があります。

 無排卵月経の場合、排卵がある月と、そうでない月とがあります。
 1回だけの無排卵なら、そう心配はありません。また、40代くらいになると、無排卵になる月も増えてきますが、3カ月に1回でも排卵が起こっているのであれば、そのリズムにタイミングを合わせるほうがよい場合もあります。

 中医学的な対処法としては、基本的にはQ8の「無月経」と同じですが、無排卵月経の場合、出血というリズムがありますので、まずはその期間に、周期療法の「月経期」に用いる薬を使い、そこから月経周期を調整していきます。

 なお、無排卵月経の原因は、1、卵胞が育っていない、2、主席卵胞がない、3、卵胞は育っているのに排卵しない(卵胞膜が厚い、排卵しないまま黄体化、など)といったことが考えられます。
 1や2の場合には、卵胞を順調に育てるために、周期療法の卵胞発育期の薬をメインにして、3の場合には、血をめぐらせる活血化瘀という対処法が必要という具合に、ケースによっても周期療法の内容が違ってきますので、漢方薬を服用するときには、専門家によく相談してください。