パニック障害
概要
パニック障害は、突然、理由のない激しい不安に襲われ、動悸、呼吸困難、めまい、ふるえ発汗などの症状が起こり、発作時は、どうにかなってしまうのではないかと思うほどの強い恐怖を覚えるなどの「パニック発作」が繰りかえすことをおもな症状とします。
パニック発作を何度か経験すると、また発作に襲われるのではないかという「予期不安」にとらわれ、発作の起こった場所や状況を恐れ回避するような行動の変化が見られるものをパニック障害といいます。
人ごみの中に出たり、電車や飛行機などの乗り物に対し強い不安や恐怖を抱くことを「広場恐怖」といいます。広場恐怖は、パニック発作や予期不安のように、パニック障害に必ず現れる症状ではありませんが、重要な症状の1つです。
ここでいう広場は、広い場所という意味ではなく、ギリシャ語のアゴラが語源で、アゴラは市場などがあって人々が大勢集まる広場のことです。
パニック障害は、病的な不安状態を主症状とする不安神経症に分類される病気で、日本では不安状態が長い期間続く「全般性不安障害」より、患者が圧倒的に多いといわれています。
パニック障害の主な症状
パニック発作
突然、理由のない激しい不安に襲われ不安発作を起こす。
予期不安
また発作が起きるのではないかと、いつも不安や恐怖をもつ。
広場恐怖
発作の起こった場所や状況を回避し、人ごみや乗り物などに対し恐怖を抱く
パニック障害の原因は
パニック発作が起こる原因として、脳幹部の青斑核と名付けられた部位が注目されています。
青斑核は、危険を身体に知らせる警報器の役割を果たしています。危険は外部だけでなく、身体の内部の危険も含まれています。
パニック発作では、この部分の活動性が異常に高まることによって起こることが確認されています。
つまり、身体に異常がないのに、偽の警報が鳴って発作が引き起こされている状態です。
最近の研究では、パニック発作を頻発させているケースでは、青斑核の活動を抑える動きが弱くなっていることが確かめられています。
パニック障害の診断基準
(アメリカ精神医学会の診断基準「DSM-IV」)
・激しい恐怖感や強い不安感があり、以下の症状が4つ以上当てはまること
(1)動悸、心悸亢進、心拍数の増加
(2)発汗
(3)身震い、または震え
(4)息切れ感、息苦しさ
(5)窒息感
(6)胸痛、または胸部不快感
(7)吐き気、腹部の不快感
(8)めまい、ふらつき
(9)現実感の消失
(10)自分のコントロールを失うことに対する恐怖
(11)死ぬことに対する恐怖
(12)感覚麻痺、または疼き
(13)冷感、熱感
パニック障害を長く放置しておくと
発作を起こすのは、心臓病や呼吸器系の病気にかかっているからだと思い込む、「心気症」的な精神状態におちいったり、外出を恐れて社会活動が出来なくなることから、気分がふさいで「うつ状態」になってしまうこともあります。
パニック障害の漢方薬治療
パニック障害は、何の前触れもなく突然起こるパニック発作や予期不安・広場恐怖など、病的な「不安」や「恐怖」が、繰り返し起こる病気です。
漢方医学では「恐」は虚証が多く、精血の不足によって起こり、陽気の有余では生じないと考えられています。
また、素問・調経論に「血、有余すれば怒り、不足すれば怒る」とあります。
パニック障害に用いられる主な漢方薬
1.腎精不足
「恐」は腎の志であり(恐が腎と関係性が強いことを示す文章)、慢性病や過労で腎の蔵している精が消耗すると、恐怖感が出現します。
恐怖感と同時に腰や膝がだるく無力、元気がない、腎陰虚の症候では六味丸、腎陽虚の症候では八味丸、鹿茸大補湯など
2.気血両虚
心は神を主る。気血が不足して、心神を養えない時恐怖感が起こります。恐怖感のほかに、息切れ、身体を動かすと汗が出やすい、無力感、顔色につやがないなど腎精が気血に変化するので腎精不足と気血両虚が合併して生じることもあります。
人参養栄湯、十全大補湯
3.肝胆不足
もともと虚弱体質で腎精が不足していると、精が気を化生することが出来ないので、肝気虚、胆気虚となります。
「肝が魂を蔵することができず、胆が決断を失うと」恐怖感が起こります。
恐怖感とともに、両胸脇部の不快感、平素から小心で恐がる。問題が生じると迷って決断が出来ないなど。呉茱萸湯
4.パニック発作
発作時は、鎮静が必要なので、柴胡加竜骨牡蠣湯に感応丸の服用をおすすめします。